ゴー宣DOJO

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高森明勅
2015.11.18 09:42

日本教師塾に出講

若い小学校の先生方を中心に自主的な研修を続けている
日本(
やまと)教師塾。

年に4回のシリーズの3回目が先日、行われた。

1回目の研修テーマが「日本の魅力」、
2回目が「沖縄」、
そして今回は「日本神話」だった。

まず、K先生、Y先生、S先生がそれぞれ15分ずつ、
テーマに添ったご自分の教育実践を発表された。

K先生は6年生のクラスの児童たちの様子を動画で紹介。

古事記の巻頭部分などを、恐らく大学生より上手に、
声を合わせてすらすら読み上げる。

K先生いわく、「読み上げると言うより、もう暗記してるでしょう」
と。

児童の1人は「今、僕はこの本に嵌まってます!」と言って、
何と私が監修したPHP文庫の『歴代天皇事典』を掲げた
ちなみに同書は、じわじわ増刷を重ねて発行部数8万部を突破)。

そして早速、「ジンム、スイゼイ、アンネイ、イトク、
コウショウ、
コウアン…キンジョウ」
と125代の天皇を諳じてみせ、
さらに北朝の5代も付け加えた。

担任が指示した訳ではない。

それどころか、先生本人は覚えていない。

なので、間違っていないかチェックできないと言う。

が、私が聞いた限り正確。

「北朝」をうっかり「南朝」と言い間違えていただけ。

「本人はほとんどゲーム感覚。難しいほど挑戦しがいがあり、
クラスのみんなに受けるのが嬉しいみたいです」と。

Y先生は、5年生への自分の授業ののアウトラインを発表された。

子供たちに身近なハロウィーンを入口に、
祝日一般の話題から
11月23日の勤労感謝の日、収穫感謝祭、
更に新嘗祭へと繋げ、
稲作の源流について天照大神がニニギの尊(
みこと)に稲を授けた
神話に、話を持って行く。

分かり易く自然な流れ。

映像もふんだんに活用。

楽しく充実した授業風景が思い浮かぶ。

ごく若い先生だが、ぐんぐん成長していて心強い。

発表後の休憩時間に私が声をかけ、天照大神からニニギの尊に
稲が授けられる場面の、
日本書紀の該当箇所を示すと、
その場で携帯電話のカメラで撮影していた。

学生時代、小林よしのり氏の『戦争論』シリーズを読んだのを
きっかけに、
教師になる使命感に目覚めたようだ。

S先生は学校教師ではなく、社会人の教育に携わる。

だからこそ可能な、現地を訪れる体験教育を大胆に取り入れている。

又、予め学習項目のメニューを示し、受講者のリクエストに応じて、
その場で授業を組み立てるなど、並々ならぬ蓄積がなければ
出来な
いこと。

さすがに、日本教師塾で先生方を前にモデル授業を発表されるだけ
あって、
3人とも熱意に溢れ、中身が工夫されていて、レベルの
高さに驚く。

大学の教員は総じて「教え方」が下手。

それ以前に、下手という自覚すらない場合がしばしば。

だから、学生の学習意欲をうまく引き出せない。

小学校の先生方から、教え方を“練り上げる”という姿勢を、
改めて学ぶ必要があるのではないか(勿論、私自身も含めて)。

その後、私が60分の講義を2コマ。

冒頭、最近の脳科学の成果などを踏まえ、人間の心の全体は理性や
意識でカバーできる範囲よりずっと広いこ
とを指摘し、
神話はそのような理性や意識を越えた部分に根っこを持つことを述べ、
皇后陛下の『橋をかける』(文春文庫)
から神話論に当たる部分を
紹介して、本論に入る。

私見では、日本神話は7つの部分に区分できる。

(1)天地のはじめ。
(2)イザナキ・イザナミ2神を巡る物語。
(3)
天照大神とスサノオの命の物語。
(4)大国主神の成長物語。
5)国譲りから天孫降臨へ。
(6)海幸・山幸の物語。
(7)
神武天皇の物語。

至らない(不完全な、出来損ないの)神々の成長を通して、
多様な世界が統合
されて行くプロセスを描く。

時間の制約で、残念ながら(1)から(3)迄を駆け足で
解説したにとどまる。

質疑応答の時間も設けた。

次回のテーマは「憲法」。

この研修会は自主的に運営されているので、
先生方が本音で知りたがっている課題をテーマに選ぶ。

だから、チャレンジングなテーマ設定が多い。

次回も楽しみだ。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

次回の開催予定

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第117回 令和6年 5/25 SAT
14:00~17:00

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